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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

研究結果と個人の実感の差「予防のパラドックス」はなぜ起きるのか

公開日: 更新日:

 しかし、全住民にマスクを勧めた時にも同様に20%予防できるとすると、50%のマスク着用率ではその半分の10%の予防効果しかない。しかし、10%の流行状況でそのうち10%がマスクによって予防できるとすると、全人口の1%の感染が予防可能で、10万人の全住民においては1000人の予防が可能になる。先の180人よりはるかに多数の予防が可能である。ハイリスク者だけに限って厳しい対策をとるというのは一見効率の良い方法のように思われるかもしれない。予防において対策の効果を実感することは困難である。多くの場合、個人については無効であると感じやすい。しかし、それは実際に予防できる絶対数でみると、全体に対策を講じたほうが効果の薄い介入であっても良い場合が多いのである。これはワクチンにも当てはまるし、高血圧や高コレステロールの治療にも当てはまる。

 最後に本連載について報告がある。日刊ゲンダイの紙面での連載は今回で終了になる。難しすぎるというのが主な理由だと聞いた。その批判はその通りだと返答するしかない。数字や計算が多く、その場で理解するのが難しいことは私も重々承知である。しかし私がここで書く理由は、この記事が十分理解できないからこそ、この先を学びたいという人に向けて書いている面が強い。紙面での連載はこれで終了だが、Webでの連載は継続となる。図表の使用なども可能になり、これまでよりもより深い内容でお届けできるいい面もある。引き続きよろしくお願いします。

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