著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

インフルとコロナ感染拡大…学校関係者はマスクに関する科学的研究成果を知るべきだ

公開日: 更新日:

 これはコホート研究の結果であるので、最も問題になるのは交絡(注4)因子の存在である。マスクを付けるような教師や子供は他にも感染予防をしっかりやっている可能性が高く、それがマスクの効果の過大評価につながる。ただこの研究では多変量解析(注5)が行われており、一応、交絡因子の考慮はされている。

 もちろん、ランダム化比較試験と違って考慮されていない未知の交絡因子の可能性が残る点はコホート研究ではいかんともしがたい。しかしその反面、地域の学校の大部分を調査できるという大きなメリットもある。特殊な人や特殊な地域が参加しがちなランダム化比較試験と異なり、一般的な場所で何が起こっているかについては、コホート研究の方が勝るのである。

 しかしながら、コホート研究の結果とはいえ、相対危険0.12という結果をもたらすような大きなバイアスの可能性は低いかもしれない。ただ秋のワクチン後には効果が見られなかったという結果からすれば、この相対危険0.12はやはり効果を過大評価した極端な結果である可能性もある。結果の解釈にはさまざまな困難がある。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  3. 3

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  4. 4

    最後はホテル勤務…事故死の奥大介さん“辛酸”舐めた引退後

  5. 5

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    名古屋主婦殺人事件「最大のナゾ」 26年間に5000人も聴取…なぜ愛知県警は容疑者の女を疑わなかったのか

  3. 8

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 9

    高市内閣支持率8割に立憲民主党は打つ手なし…いま解散されたら木っ端みじん

  5. 10

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘