著者のコラム一覧
新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

レビー小体型認知症は最初に幻視・妄想やパーキンソン症状が現れる

公開日: 更新日:

「半年ほど前、78歳の夫がレビー小体型認知症と診断されました」

 こう話す女性は、夫婦2人暮らし。娘が電車で15分ほどの距離に住んでいるものの、子育て中ということもあり極力頼らず介護に当たっているそうで、「アルツハイマー型認知症はなんとなく症状が想像つきますが、レビー小体型認知症は、名前を聞いてもピンと来ませんでした。解説している本をいっぱい読みました」(女性)。

 レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症、血管性認知症に次いで多い認知症です。

 αシヌクレインというタンパク質を核とする物質(レビー小体)が大脳皮質にたまり、脳の神経細胞が死滅していくことで症状が現れます。はっきりした脳の萎縮は見られないことが多い。

 一方、アルツハイマー型認知症はアミロイドβの蓄積から始まり、海馬を中心に脳の萎縮が見られます。血管性認知症は脳梗塞や脳出血が原因で脳の血液循環が悪くなり、脳の一部が壊死する。レビー小体型認知症とは、脳の変化の様子が異なります。

 ちなみに、この認知症を世界で初めて発見したのは日本人で、昨年お亡くなりになられた横浜市立大名誉教授の小阪憲司先生です。筆者にとって学位論文のご指導を受けた恩師でもあります。1976年のこと。その後、「レビー小体型認知症」と名付けられ、それまで知られていたアルツハイマー型認知症と異なる症状を持つ認知症として、国際的に注目されるようになりました。

 レビー小体型認知症は最初に幻視・妄想や、パーキンソン症状が見られることが多い。アルツハイマー型認知症では早くから見られる物忘れは、レビー小体型ではなかなか出てきません。

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