「変形性膝関節症」痛みを抑える新たなメカニズムがわかった
保存療法で症状の改善が見られない場合に適応される人工関節置換術は、痛みを安全に取り除いてQOLを改善させる効果が高いとされているが、約3割は手術を受けても痛みが残るといわれている。このような背景から、新たな治療薬や治療法の開発が求められている。
■新薬開発の第一歩
そんな中、森岡氏らの研究で、変形性膝関節症の痛みを和らげる治療薬として期待できる“標的”が発見されたという。
「以前から行ってきた研究で、原因がそれぞれ異なる慢性痛を持つマウスに対して、細胞の中(核内)にある受容体のひとつである『REV-ERB』を薬物で刺激すると、慢性痛を改善することが分かっていました。そこで今回、変形性膝関節症を発症したマウスの膝関節内にREV-ERB刺激薬を投与したところ、偽薬を投与したマウスのグループと比較して痛みが緩和されると分かりました」
また、大腿骨にある軟骨組織の厚さを測定したところ、軟骨のすり減りも抑えられていた。さらに、ラットの膝関節内の軟骨組織をつくる軟骨細胞を培養し、人為的に炎症を生じさせて痛みのもととなる炎症物質が増加するのを確認し、そこにREV-ERB刺激薬を投与すると、炎症物質の増加が抑制されたという。