意図的に環境を整備することで意思決定や行動を変えられる
私たちの意思決定は環境に左右されているといっても過言ではありません。やらなければいけない課題があるのに、スマホをいじってしまうのはなぜでしょうか? 手の届く範囲にスマホがあるからです。仮に、金庫の中にスマホを入れてロックしてしまえば、容易にスマホに触れることはできなくなります。
車を運転しながらコンビニを探しているとき、皆さんは左側車線沿いにコンビニがあればいいなと思うはずです。それは、車を止めやすい環境であることを、私たちが認識しているからです。
アメリカの経済学者のリチャード・セイラーが2017年にノーベル経済学賞を受賞したことで広く知られるようになった「ナッジ」という行動経済学の用語があります。端的に説明するなら「行動科学の知見を利用し、人々の選択の自由を損なうことなく環境を整えることで、本人や社会にとって好ましい行動を実現させる方法」のことです。
実際、私たちの生活にはナッジがたくさん導入されています。
たとえば、トイレにある「いつもきれいに使っていただいて、ありがとうございます」という張り紙。こうした張り紙を見ると、不思議と「きれいに使わなければいけない」と感じてしまうのは、まさにナッジを活用した事例です。また、コロナ禍の際に、ソーシャルディスタンスを保つために足元に靴のマークが描かれているケースが多数ありましたが、皆さん、無意識にマークに足を置いたはずです。