鉄道会社がうたう「座りたい」ニーズは本当にある? 有料着席サービスに見え隠れする別の思惑
着席ニーズは確かに存在するが、それ以外の要素も
東急にとっては厳しい内容だった今回の特集。「短距離で500円は金額に見合わない」というのはそれなりに納得いくが、そもそも、番組や鉄道会社が言う「着席ニーズ」なんて、本当にあるのだろうか。鉄道ライターの小林拓矢氏は「日刊ゲンダイDIGITAL」の取材に対し、着席ニーズなるものは確かに存在するものの、それ以外の要素も見え隠れすると指摘する。
「東急東横線の『Qシート』は、あくまで着席需要に応えようとしたものです。ただ、人口減少社会で鉄道の利用者が減少し、それによる減収をどう補おうかと、試行錯誤している中で生み出されたサービスだといえます。収益力増強という側面も、ないわけではないのです」(小林氏)
さらに小林氏は、鉄道会社が収益力を強化しなければならない理由について、各社が併せて展開するさまざまな鉄道以外のビジネスが長引く不況で振るわず、「鉄道でのマイナスを不動産や流通でカバーして、という時代ではなくなっているのです」とも説明。その結果、「物価高に伴い運賃などを上げなければいけない状況です」と指摘した。
最後に小林氏は、鉄道の乗車料金は国の認可が必要であるため簡単に上げることはできない一方で、席代などの特別料金は事前の届け出で良いとしつつ、「こういった座席を設定して収益力を上げ、近い将来の鉄道事業での減収に備えるという事情もあります」と明かす。
着席ニーズに応えるのはもちろん、各社が先を見据えて収益力を強化しようとしている思惑が反映された特別料金には、日本社会の将来像が反映されているようだ。