菅野と涌井にも異変 コロナで試合減も投手の肘は崩壊寸前
■トミー・ジョン手術者はすでに9人
これもコロナ禍の影響か。開幕が約3カ月延期となった今年、公表されているだけですでに、9人もの投手がトミー・ジョン手術(肘の内側側副靱帯再建術)を受けているのだ。
開幕前に手術に踏み切った投手が4人、開幕後に手術をした投手はロッテの種市(9月14日)、広島の戸田(7月15日)など5人。開幕前に手術をした投手の中には、開幕が6月にズレ込んだことで、早い段階で来季を見据えてメスを入れたケースもあるだろうが、今年は3カ月強を残し、すでに例年よりも多くの投手が肘にメスを入れている(2019年5人、18年2人、17年4人=日刊ゲンダイ調べ)。
広島の大瀬良やロッテの田中のように肘の遊離体、いわゆる「ネズミ」が原因で手術した投手や、肘の炎症、違和感で離脱した投手も複数いる。
さらに、開幕から連勝街道を走っていた巨人の菅野や楽天の涌井も、少なからず、投球に陰りが見え始めている。
菅野は直近2試合の登板でそれぞれ3失点。22日の広島戦では七回にこの日最速となる156キロをマークするなど、スタミナを見せつけたが、9月15日の阪神戦では開幕11連勝を達成したものの近本に2打席連続本塁打を浴び、試合後には「今日はあまり体調がよくなかった」とコメントした。
23日のロッテ戦で8月19日以来の9勝目をマークした涌井は、9日のソフトバンク戦で5回8失点と打ち込まれると、16日のオリックス戦では試合途中に左足がつりそうになり、六回で降板した。
1996年から2002年まで中日のチームドクターを務めた亀戸佐藤のり子クリニック院長の佐藤のり子氏は、こう指摘する。
「3月にコロナ禍によってチーム活動を自粛。選手たちは『3密』を避けるため、全体練習ができない時期があった。6月19日に開幕するにあたり練習試合の機会も少ないまま、シーズンに突入した。過密日程で投手のやりくりが難しい上に、例年とは違う調整を強いられたことで、特に投手は多くの損傷を被っている可能性があります」
今季開幕前の練習試合は各球団で10~12試合。先発投手の登板機会は2度ほどしかなかった。
メジャーは公式戦を60試合に大幅縮小した一方で、日本は6月19日から5カ月で120試合の強行日程を戦うことになった。
首脳陣は故障防止のために例年以上に休養を与えるなどの配慮はしているが、選手は今季の年俸を保証されている分、無理をおしてプレーするしかない状況になった。