自転車・中村妃智は病で体重17kg増…待っていた過酷な生活
中村妃智(自転車 マディソン/27歳・日本写真判定 所属)
中学2年で日本一、中学3年では日本2位に輝いた。自転車競技ではなく、口にシュノーケル、足にフィンを装着して室内プールで泳ぎの速さを競う、全日本スポーツダイビング室内選手権(ジュニアの部)でのことだ。
千葉県浦安市に生まれた中村は乳幼児時代からベビースイミングを始めた。物心ついた頃にはウエットスーツを身にまとい、サーフィン好きの父に連れられて自身はボディーボードに熱中。小学4年からは生活にバスケットボールも加わった。市内の公立中学ではバスケ部に所属。持久力に自信があり、「体力測定のライバルは男子生徒だった」という。市のマラソン大会で度々、優勝した過去も持つ。このスポーツ少女が自転車競技と出合ったのは、千葉経済大付属高に進学してからのこと。
「バスケ部は推薦入学の生徒ばかりでインターハイに出るような強豪チーム。埋もれて試合に出られない3年間は嫌だなと、陸上部に入るつもりだったんです。練習を見学しようと思っていたら、敷地が広くて場所が分からず……。練習場を聞こうと、たまたま話しかけたのが自転車部の監督でした(笑い)。すると『今からでも全国を目指せるよ』って言われて。乗せられる形での入部です」
■満足に眠れないのに食欲は男子以上
自転車競技と出合って3年目には、ACCトラックアジアカップの日本代表として世界で戦える選手に成長を遂げた。
「俺には分かる。おまえはまだまだ強くなれるぞ」という監督の言葉を信じ、勧められるまま日本体育大のAO入試を受け、入学。当時はジュニア強化指定選手に選ばれており、さらなる躍進が期待されていた。
しかし、迎えた新生活には“ドン底”の日々が待っていた。
「一時はスピリチュアル的な要因も疑いました」と、中村はこう続ける。
「入学してからというもの、日常生活を送ることすらしんどいくらい体が重くなっていったんです。夜中は毎晩6回くらいトイレに目が覚めて満足に眠れず、いつも寝不足状態。寝坊、遅刻を繰り返し、練習にはだんだんついていけなくなりました。自転車のトレーニングはおろか、ウオーミングアップのランニングすら、ままならず……。集団行動が基本の寮生活でも、周りに迷惑ばかり掛けてしまいました。それなのに食欲だけは異常なほどで、3人前くらいかな、男子よりも食べていたんです」
この年に自転車部へ入部した女子は中村ただ1人。相談できる仲間もおらず、原因不明の体調不良を抱えたまま競技に励んだ。「新しい環境に慣れるために、ただ必死だった」という。