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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

WBCの源田やW杯の三笘が“ミリ単位”プレー 数字にできない魂を機械が証明する時代になった

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 審判だって間違いはある。人サマが作ったルールに絶対はなく、スポーツは常にさまざまな変化と向き合っている。タイブレーク、球数制限……反対の声も多いが、今季のメジャーリーグで話題の「ピッチクロック」も、テニスでは数年前から採用されてきた。

 条件が変われば記録も絶対でなくなる道理だが、マスコミは相も変わらず、史上初とか歴代何位と声高に叫ぶ。記録はスポーツの重要な要素ではあれ、あくまで目安。かつて“記録の神様”といわれた宇佐美徹也は「最近の記録は語呂合わせだ」と嘆いた。本質を外れた数字に踊らされてはいけない。

 テニスの審判は最大10人と書いたが最小はゼロ。ジュニアや一般大会で採用されている、選手自身が判断するセルフジャッジがそれだが、こうした試合に主審がついているのは日本だけ。年配の愛好家から国内の試合はつまらないと聞いたことがある。海外では相手のナイスショットが少し外れてもインにするのに、日本ではぎりぎりのショットはすべてアウト……。

 勝ち負けの記憶は薄れ、感動的なプレーの印象はいつまでも残る。WBCがこれだけの共感を集めたのは、球速や飛距離の数字ではなく、ダルビッシュや大谷のガッツが見る者の留飲を下げたからだ。源田や三笘の数字にできない魂を、「機械」が1ミリで証明したわけだ。誰しも変化に抵抗はあるが、それを恐れてはいけないということだろう。

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