「広島」「被爆者」――50年前の恋人を探す男がたどりついた「別れの真相」
映画「TOUCH/タッチ」1月24日公開
人は老年に達し、残りの人生を意識したときに何をしたいと望むだろう。多くの人は過去に向き合おうとするのではないか。実は60代半ばの筆者も同じ。この数年、昔の友人・知人を訪ねてみたいという願望が高まっている。そんな折、映画「TOUCH/タッチ」(バルタザール・コルマウクル監督、1月24日公開)の主人公に接して清々しい感動を覚えた。
物語はコロナ禍の2020年と1969年が回想によって小刻みに往復する。50年の時空の連動によって主人公が過去の記憶を手繰り寄せ、人生の「積み残し」を片付けようとする姿は大人の観客の胸を打つはずだ。
アイスランドでレストランを経営するクリストファー(エギル・オラフソン)は新型コロナの世界的流行が始まったころ、初期の認知症との診断を受ける。医師から「やり残したことはないか」を問われた彼は旅に出ることを決意。それは学生時代を過ごしたロンドンで恋に落ちた日本人女性ミコを捜す旅だった。
1969年、大学を中退したクリストファーは見習いとして日本料理店で働くこととなった。店主である高橋の愛娘がミコ(Kōki,)。2人は熱愛に落ちるが、ある日突然、ミコは父と共に姿を消してしまう。51年後、老境のクリストファーは薄れゆく記憶と戦いながらロンドン、日本と旅を続け、過去の真実に向き合おうとするのだった……。
クリストファーを演じたのはコルマウクル監督の息子のパルミ・コルマウクル。なかなかのイケメンだ。ミコ役のKōki,が木村拓哉と工藤静香の長女であることは言うまでもない。父親の高橋は本木雅弘が好演している。
Kōki,はクリストファーとラブシーンを熱演。製作国がアイスランドと英国で、日本の映画会社が絡んでいないことが少し残念に感じられるのは完成度の高さゆえだろう。