「放射能汚染とリスクコミュニケーション」天笠啓祐氏
「今、福島の保健師さんたちが帰還政策の最前線で苦悩しています」
リスクコミュニケーション、略して「リスコミ」が、福島に住民を帰還させようという政策とセットで進められている。
「原発事故による放射能汚染は健康に影響しません、危険はありませんよと住民に説得するのがリスコミです。事故のあと、福島県の保健師さんたちは、どうやったら放射能の影響が少なくてすむか、住民と一緒に考えながら一生懸命に取り組んできました。ところが今度は、放射能なんか気にしなくていいと説得しなさい、小さな集まりで車座になって住民に話をするようにと、県や市町村から命令され、帰還政策の最前線に立たされています」
本書は、そんな現場で苦悩している保健師や住民の役に立つパンフレットであり、放射能汚染の入門書である。
「これまでもリスコミとして、政府方針についてのパブコメ(パブリックコメント)の募集がありましたが、パブコメの意見を無視し、疑問に答えないままでした。で、今度は、国民の抵抗が大きく政策がすんなりと進まないテーマについては、政府の側から住民を積極的に説得していこうと一歩踏み込んだんですね。結局、ますます一方通行になるわけで、上智大学教授の島薗進さんは、これではリスコミではなく安全神話の『スリコミ』だと言ってます」