「つちくれさん」仁木英之氏
遺跡の発掘中に何千年か前の棺が発見された。フタを開けたら出てきたのは死んで間もない美女の死体! しかも卑弥呼の時代の衣服を身に着けている。この面妖な事件の謎を解くのが元刑事・福沢登と、〈つちくれさん〉と呼ばれる考古学者・瀬山紀芳。瀬山は地勢と土を見てほぼ遺跡を見通してしまうという発掘の達人である。
「父方の伯父に瀬川芳則という考古学者がいて、〈つちくれさん〉のモデルなんです。子どものころから考古学のおもしろい話を聞かせてくれて、いつか考古学者を主人公にした作品を書きたいと思っていました」
ミステリーの舞台となるのは長野県千曲市の森将軍塚古墳の発掘現場。その遺跡から卑弥呼を思わせる姿をした遺体が発見されるのだが……。
「遺跡の発掘は地味な作業で、石の棺が見つかっても何も入っていないことが多いんですよ。だから、棺の中に眠っている姫さまがいればびっくりするんじゃないかと」
もうひとりの主人公の福沢は、老後のために考古学の講座に通い、発掘中の遺跡を見学する。退職する当日にその遺跡で死体が発見され、興味をもつが、もはや捜査の情報は入らない。