突然打ち切られた「ひょっこりひょうたん島」
郵政省といえば、当時の自民党の大票田である郵便事業を所管するとともに、電波行政も管轄する。NHKの直接の所管官庁でもある。
当時、放送作家でこの番組の原作者・脚本家のひとり、井上ひさし(2010年に死去)も晩年、雑誌で郵便局長会や当時の有力郵政族議員の打ち切りへの関与を認めている。
井上ら当時の現場スタッフにとって、打ち切りになった理由は不可解だった。後年、NHK上層部の人と接する機会があり、理由を聞いてやっと事情を知ったという。
この番組はまだ29歳だった井上ともうひとりの放送作家、NHKの若いディレクターの3人でスタートした企画。子供たちが遠足に行ったひょうたん島が火山の噴火で大海原に流され、そこにドン・ガバチョやトラヒゲといった個性的なキャラクターが現れ、ともに波に流されるまま奇妙な国や島を訪ねるというストーリーだ。
当初は視聴率が10%も行かず、「半年で打ち切りかもしれない」と苦戦するが、井上らの奇抜で独自の世界観のストーリーや作曲家・宇野誠一郎の多彩な楽曲が徐々に浸透して、人気に火がついた。声優陣は藤村有弘や熊倉一雄、中山千夏、楠トシエら。明るく歌いやすい主題歌や個性的な面持ちの、今の言葉でいうなら「キモカワイイ」人形たちの造形も、ヒットの要因だったようだ。