突然打ち切られた「ひょっこりひょうたん島」
<1969年4月>
1960年代にNHKで放送され、子供を中心に国民的人気だったミュージカル形式の人形劇「ひょっこりひょうたん島」。番組は5年間、1224回続き、大人気の中、69年4月で突然打ち切りになった。
4月4日、「ひょっこりひょうたん島」は最終回を迎えた。夕方5時45分からの15分番組という不利な時間帯にもかかわらず、最高視聴率37.5%を叩き出した。人気が衰えているわけでもないのに、なぜ終わってしまうのかという声が殺到したのは言うまでもない。
実はこれには、生ぐさい政治的な事情が絡んでいたのである。
問題となったのは前年に放送された、国民全員が郵便局員という「ポストリア国」にひょうたん島が流れ着き、さまざまな騒動が起こるというシリーズだった。
「ひょっこりひょうたん島」は、笑いの中に大人がくすっとするような風刺が込められているのが特徴。このポストリア国で大統領を務めるのは郵便局長。この大統領が泥棒姿で盗まれた車を盗み返すシーンなどがあった。視聴者には単なるギャグとしか思えないものだったが、これが郵便局や郵便局長を皮肉ったものと当時の大物政治家が問題にし、NHKに圧力をかけたのが打ち切りの内幕といわれている。