危機管理ドラマ「リスクの神様」放送局フジも他人事にあらず
【連載コラム 「TV見るべきものは!!」】
企業ドラマ自体は決して珍しくない。しかし、「危機管理」に特化した内容となると、これが初めてかもしれない。企業にとって、たったひとつのトラブルであっても、その処理を誤れば存亡の機に追い込まれる時代だ。狙いとしては悪くない。
主人公は、米国の企業や政府の案件でも実績のある、危機管理専門家・西行寺智(堤真一)。国内の大手商社、サンライズ物産に招かれて、危機対策室長に就任する。最初の案件は、電機メーカーとの共同開発による次世代型バッテリーを使った新製品の発火事故だ。
西行寺も言うように、危機に直面した企業は無傷ではいられない。後は何を捨て、何を守るかだ。その対応の仕方によっては、危機をチャンスに変えることも可能だ。このあたり、何度も痛い目に遭ってきたフジテレビにとって他人事ではない。
ドラマでは、新製品の開発責任者である神狩かおり(戸田恵梨香)が、不祥事の責任を負う形になる。その背景には組織防衛だけでなく、社内の権力闘争がある。人間くさい企業ドラマの醍醐味だ。また、東大卒で数カ国語を操るマルチリンガル才女には見えない戸田も、ここぞという場面で気迫の芝居を見せている。
同じ時間帯に「花咲舞が黙ってない」(日本テレビ系)があるのはつらいが、組織の表と裏を描く本格的社会派エンターテインメントである。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)