「西郷どん」難解方言が話題 お国言葉の歴史と魅力を知る
薩摩の西郷隆盛を主人公にしたNHK大河ドラマ「西郷どん」がスタートしたが、難解すぎる“方言”をめぐって賛否両論が渦巻いている。
標準語で「紹介します」は、薩隅(鹿児島)弁になると「紹介シモス」に。「ありがとうございました」は「アリガトサゲモシタ」、「そうです」は「ジャッド」、「しかし」は「ジャッドン」になる。文脈や役者陣のしぐさや所作を見れば容易に推測できるとはいえ、戸惑った視聴者がいたのも当然だろう。
もっとも、今も鹿児島のおばあちゃんが話す本物の方言となればこんなものではない。江戸時代には標準語というもの自体がなく(国語調査委員会設置は1902年)、互いに言葉が理解できない場合、当時は「ござ候」など漢文調の文語によって意思疎通を図っていたという。
むろん、NHKの制作サイドも今作ではディープなネーティブ言語はなるべく避け、「ヤッセンボ」(臆病者、役立たず)といったセリフには字幕で対応している。
「明治時代に言語統一という方針が決まり、東京山の手の言葉をもとに標準語ができました。とはいえ、お国言葉は宝物であり、なまりを聞くだけで『ひょっとして同じ出身かな』と気づいてうれしいもの。ネガティブな表現ですが、1963年に起きた吉展ちゃん誘拐事件では身代金要求の電話の声のアクセントが犯人特定のひとつの要因ともなりました。それぐらい方言は消すことが難しいのです」(フリーアナウンサーで東京成徳大学客員教授の梶原しげる氏)