小島一慶さん<2>サラリーマンというのは上司次第ですね
「番組に出るには、オーディションを受けて合格しなくてはいけませんでした。確か3期先輩の小川哲哉さんらに勧められて1回目の試験を受けたのですが、ガチガチに上がってしまってすっとんきょうなしゃべりになった。ところが、レコード会社の人が『面白い』と思ってくれたようで採用されたのです。当時のアナウンサーはNHK的なしゃべりがヨシとされていましたが、土居まさるさんが出てきて流れが変わり、それを真似したのが僕と、同い年のみのもんたさんでした。ただ、僕のしゃべりは明らかに“ヘン”なわけですから、社内では上司や偉い人をわざと避けていましたね」
だが、ある日、TBSの旧社屋の渡り廊下で小坂さんとバッタリ出くわしてしまった。
「真正面で一対一ですから、『あっ、イタッ!』と逃げられない。絶体絶命で怒られると思っていたのですが、小坂さんの口から出てきたのは『面白いじゃないか』という予期せぬ言葉でした。踏み外すのはダメだけど、アナウンサーの領域を広げるのならいいというのです。5、6年上の先輩アナウンサーには、『オレには良いか悪いかの判断がつかない』と言われましたが、小坂さんは『面白いじゃないか』と言ってくれた。結局、サラリーマンっていうのは、上司次第みたいなところがあります。僕は90年にTBSを退社してフリーになったのですが、当時の上司に『営業に行ってくれ』と何の前触れもなく言われたことがきっかけでした。上司が違えば、その後の道も違ったかもしれません」