今クールは2作品スタート “解剖医ドラマ”はなぜ人気なのか
今夏の連続ドラマで、解剖医を主人公にした作品が2つスタートした。「監察医 朝顔」(フジテレビ系)と「サイン―法医学者 柚木貴志の事件―」(テレビ朝日系)だ。
この解剖医という仕事、ドラマの題材としては引っ張りだこでも、現実には人気がない。
少し前の資料になるが、警察庁刑事局の「司法解剖の実施」(2014年6月)によると、解剖医の数は全国で154人だけ。医者は30万人以上もいるが、死者を相手にするのは、その0.05%程度。統計的には誤差のような存在だ。
それが同時期に主人公に“抜擢”されるのは、いったい、なぜなのか。
コラムニストの桧山珠美氏は「刑事ドラマと医療ドラマを掛け合わせたハイブリッド型の物語を作れるのがポイント」と指摘する。
「刑事ドラマと医療ドラマは、手堅く数字を稼げるコンテンツ。ただし、どちらもやりつくした感があります。刑事ドラマではさまざまな犯罪のパターンを見せてきたし、バディーモノや警察組織の内部をえぐるストーリーも新味がなくなっています。医療ドラマも外科医、救命医、産婦人科医、小児科医など専門分野からのアプローチはもちろん、権力闘争も扱ってきた。そんな中で新しさを出す素材として注目されているのが解剖医。命と向き合う仕事なので放っておいてもヒューマンドラマになるし、現場にも足を運ぶタイプに仕立てれば、謎解きまで見せられます。新しさを出しながら“いいところ取り”ができるわけです」(桧山珠美氏)