迷いながら芸風が完成 ぺこぱ松陰寺「一番遠回りな近道」
松陰寺は模索を続け、ド派手な着物を着てローラーシューズを履くキャラに定着。そのキャラのまま、シュウペイのボケにツッコんでいたが、冷静に考えれば、おかしいのは自分だと思った。
「お客さんの中にある『こう来るだろう』っていうのをさらに裏切りたいと思って、『いやおかしいだろ……って言ってる俺はなんなんだ!』みたいに言ってみた」(とうこう・あい「QJWeb」20年2月5日)
すると、今まで感じたことのないウケ方をしたのだ。つまり、その言葉こそ「体重の乗った」言葉だったのだ。
このスタイルで昨年、年明けの「ぐるナイ!おもしろ荘」(日本テレビ)で優勝。いよいよブレークかと思われたが、テレビで引っ張りだこになったのは「パンケーキ食べたい」の夢屋まさるだった。この番組の収録の合間に、松陰寺は岡村隆史に「着物、変やで」と言われた。同じ頃、TAIGAに「スーツにした方がいい」とのアドバイスも受け、いよいよ現在の形が完成した。
松陰寺は「結局、あの漫才も漫才をフリにした漫才なんで。全然優しさ先行じゃない」(テレビ朝日「太田伯山~悩みに答えない毒舌相談室~」20年3月11日)と明かし、過剰に「優しい」キャラを求められる現状への悩みを吐露。「ベールを脱ぐのが早すぎないか」と言われると、「ベールが重すぎるんです」と答えた。一方で「良かったのは、今やってる『松陰寺太勇』と『本物の私』がちょっと重なってる部分があった」(同前)とも言う。
「僕らは『一番遠回りな近道』を歩んできた」(とうこう・あい「QJWeb」20年2月6日)と言うように、ぺこぱは迷いながら「本物の自分」に少しずつ近づいてきたのだ。