小林亜星さん 酒と女と頑固おやじのハチャメチャ昭和伝説

公開日: 更新日:

 昭和は遠くなりにけり――。心不全のため、5月末に88歳で亡くなった作曲家・小林亜星さんの訃報に接し、昭和生まれの世代は改めてそう感じているのではないか。

 都はるみ「北の宿から」、日立グループ「日立の樹」などのメロディー、向田邦子作、久世光彦プロデュースで、東京は谷中の石材店を舞台にしたTBS系ホームドラマ「寺内貫太郎一家」でちゃぶ台をひっくり返し、息子役の西城秀樹と取っ組み合いを演じた頑固おやじの姿は昭和を象徴するアイコンであった。

「亜星さんは撮影中、本気になって、お茶の間から庭まで西城さんを投げ飛ばし、骨折させてしまったエピソードは有名な話。コンプラ重視の今だったら即打ち切り。今なら絶対に撮れないドラマでしょう」(シナリオも手掛ける放送作家)

 その素顔も、昭和っぽい男であった。大酒飲みで、テレビ局で作曲を依頼された楽譜をどこかに忘れてしまい、大慌てになると、関係者がそれを見越してコピーを取っていたとか、朝帰りで爆睡中にアレンジまで浮かんだといったエピソードは数知れず。

 全盛期にはウイスキーを毎晩一瓶転がし、ハイライトを毎日5箱吸っていたという豪快さ。

 1985年刊行の短編小説集「軒行灯の女たち」では、新風営法施行前の赤線地帯での遊びを描いていて、それらはほぼ実体験に基づくものであることを認めている。

 丸々とした顔の巨漢でお茶の間に親しまれたが、1994年に日本音楽著作権協会(JASRAC)の巨額無利子融資問題が騒動になると執行部の不正を糾弾し退陣を迫るなど、持ち前の正義感で法廷闘争の先頭に立った。

 ベテラン芸能記者の青山佳裕氏はこう言う。

「藤谷美和子さんが皇居にタクシーで乗りつけ、紀宮さま(当時)に手紙を渡す渡さないで騒動になったとき、烈火のごとく怒っていたのを思い出します。ドラマさながらの頑固おやじというか、たとえよその子であろうと、悪いことをしているところを見つければ頭を小突いて、叱りつけるような姿が懐かしい。いつの間にかそういう頑固オヤジの存在がいなくなってしまったことに気づかされます」

「いつ逝ってもいいんです」

 テレビ朝日系「徹子の部屋」に計6回出演した映像が再放送され、17年12月の放送では、こう言っていた。

「行きつけの飲み屋で友だちが亡くなっていき、今では僕が最高齢。明日逝くかもしれないし、いつ逝ってもいいんです」

 作家の故・野坂昭如さん、故・永六輔さんとともに反戦平和の尊さを訴えていた亜星さん。義理も人情も昭和に置き去りになった令和の日本をどのように見ていたのだろうか。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  4. 4

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  5. 5

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  1. 6

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  2. 7

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  3. 8

    兵庫県・斎藤元彦知事を追い詰めるTBS「報道特集」本気ジャーナリズムの真骨頂

  4. 9

    やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目

  5. 10

    今田美桜「あんぱん」に潜む危険な兆候…「花咲舞が黙ってない」の苦い教訓は生かされるか?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 4

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  5. 5

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  1. 6

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  2. 7

    大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」

  3. 8

    NHK新朝ドラ「あんぱん」第5回での“タイトル回収”に視聴者歓喜! 橋本環奈「おむすび」は何回目だった?

  4. 9

    歌い続けてくれた事実に感激して初めて泣いた

  5. 10

    フジ第三者委が踏み込んだ“日枝天皇”と安倍元首相の蜜月関係…国葬特番の現場からも「編成権侵害」の声が