中尾彬夫妻の“おしどり夫婦”ぶりは「おい、志乃」「何、おまえさん」とやりとりしているようだった
そんな経緯があって池波さんが台本の裏に越乃寒梅が飲める店の地図、電話番号を書いて教えたが、結局、2人で行くことになったのが付き合いの始まり。池波さんは「噺家の血筋(祖父が5代目古今亭志ん生、父は10代目金原亭馬生)ですから、私たち夫婦は付き合うきっかけもお酒でした」と語った。そして「酒の飲み方も志乃さんとは最初から合いましたね」と中尾さん。
中尾さんは2007年に急性肺炎および横紋筋融解症の大病を患い、2カ月入院。それでも「その時は飲めなかったけど、退院して少しずつ飲み始めました。酒を飲まなきゃ人生の楽しみを半分知らないようなものです」ときっぱり。
16年間「食日記」をつけていること、夜には池波さんのお品書きが届いて晩酌する話なども。
中尾さんの大好物もうかがった。「海のパイナップル」ホヤだった。中尾さんが好きだったのは切ったホヤを乾燥させ、かつてキャラメルを入れて売っていたような紙の箱に入れた珍味。ホヤは三陸でとれるため、東北新幹線の車内で販売されている。中尾さんは他に買い求める人を気遣い、1箱くらい残して買い占め、珍味を堪能した。日本酒片手に珍味を食い尽くす中尾さんの姿が目に浮かぶようだ。
そんな伴侶を失った池波さんの寂しさも偲ばれる。 合掌
(峯田淳/日刊ゲンダイ)