戸籍を男から女に変更したカルーセル麻紀
カルーセルは「初めて化粧をしてパスポートの写真を撮った。早く使いたい」とはしゃいだ。特に行きたいのは、73年に150万円をかけて性転換手術を受けたモロッコ。「病院の前で『女になったわよ』と叫びたい」という。
この年の7月16日、性転換手術を受けた「性同一性障害者」が戸籍の性別を変更できる「性同一性障害特例法」が施行された。カルーセルは同日、東京家庭裁判所に戸籍に載っている性別と名前の変更を申し立てた。
しかし、道のりは楽ではなかった。性別の変更手続きには「身体面」と「精神面」で「性同一性障害」であることを証明する必要がある。大学病院に行き、分娩(ぶんべん)台に足を乗せられて男性器が残っていないか、屈辱的なチェックを受け、身体面の証明書をもらう。
その後は精神面の証明書をもらうため、大学病院から紹介された精神科に行くが、「絵を見せられて『これは何に見えますか』とか納得がいかない質問ばかりされて、診断書を書いてもらう順番も36番目と言われ、いつ書いてもらえるかもわからないような扱い。『もういい、やめた』」という心境になったという。