心臓手術は人工透析患者より中途半端に腎臓が悪い方が難しい
腎臓が中途半端に悪い患者さんよりも、人工透析の患者さんの方が治療を組み立てやすいのは、手術以外にも当てはまります。たとえば、抗がん剤治療や、利尿剤や抗生物質を使う薬物治療も同じです。人工透析の患者さんは、透析を受ける際に薬剤の管理ができますし、腎臓の状態もコントロールしやすいといえます。人工透析は患者さん本人にしてみればもちろんつらいのですが、医師から見ると管理しやすいのです。
一方、慢性腎臓病の状態でギリギリ耐えてきたような患者さんは、うまくコントロールできていない状態を長く続けてきたことになります。腎機能が衰えている上に、他の病気の治療によって、さらに悪化する可能性が高くなってしまいます。
しかも、腎臓が中等度くらいに悪い患者さんは、悪い状態だという自覚がない場合がほとんどです。完全に尿が出なくなってしまって、人工透析を受けなければ尿毒症で亡くなってしまうようなレベルであれば、本人も深刻に受け止めます。しかし、中等度の患者さんは1日に1500㏄くらいの尿が出ていて、食べ物に多少気を付けるぐらいの食事指導を受けている程度といったケースが多いので、それほど重症には考えていないことが少なくないのです。
腎臓疾患はそれ自体も深刻な病気ですが、血圧のコントロールを悪くしたり、動脈硬化を進めたり、心臓も衰えさせます。他の臓器の治療にも悪影響を与えます。「腎機能が悪い」と指摘されている人は、しっかり管理する必要があります。