心臓手術は人工透析患者より中途半端に腎臓が悪い方が難しい
しかし、腎臓が中途半端に悪い状態の患者さんは、心臓手術をきっかけにして腎臓がさらに悪化し、人工透析になってしまう可能性があります。手術中は、血圧が大きく変化したり、使用する薬などによって、腎臓に大きなダメージを与えてしまうことがあるからです。手術をきっかけにして人工透析になってしまうと、心臓は良くなったとしても心身のダメージが非常に大きい。一体、何のために心臓の手術をしたのかがわからなくなってしまいます。
■自覚していない人も多い
そうかといって、心臓の治療を手控えれば、腎臓の悪化がさらに加速してしまいます。そのため手術をする側は、さらに細心の注意を払わなければならないのです。
腎臓に合併症がある患者さんには、負担がかかるような薬はなるべく使わないようにしますが、それでもどうしても使わなければならないケースもあります。その場合、術中に特殊な透析装置を使った「CHDF」と呼ばれる持続血液透析濾過を行い、腎臓にダメージを及ぼす物質を除去して保護しながら、手術がソフトランディングできるようにします。それくらい、気を使わなければならないのです。