支援制度はあっても…働き続けた人の1割が会社を変えた
東大医学部付属病院放射線科准教授・中川恵一氏がこう言う。
「たとえば、胃がんや大腸がんの早期なら、日帰り手術が可能なケースもあり、早期がんは95%が治ります。仕事と治療の両立が問題になるのは進行がんで見つかったケースです。そこで壁になるのが就業規則で、時短や有休を活用できるかどうか。大企業だと、がん患者の就労支援で活用できても、中小企業だと就業規則に明文化されていても上司や社長の無理解で活用できないことが少なくない。周りの反感を買ったり、冷たくされたり。だから、がん拠点病院の相談支援室や産業保健総合支援センターなどに治療と仕事の両立について相談するのが有効なのですが、そんな対応策を知らずに追い込まれ、行き場を失うケースがよくあるのです」
たまたま会社を辞めずに済んだとしても、不利益を強いられることがある。前出の調査では1割以上の人が、評価が下がったり、給与が下がったりしていた。役職を降格されたケースもある。
「治療のために働く時間や日数が短くなったことで、その分、給与が少なくなることは納得できるでしょう。ただ、本人が望んでいないのに、過度な配慮で、配置換えをされたり楽な仕事に回されて給料が減る場合もある。フルで働けない人を適切に受け入れる環境が整っていない職場はまだ多いのです」(矢島洋子主席研究員)