漫画家・東海林さだお氏 肝細胞がんと闘い辿り着いた境地
世の中に“病気自慢”の人は多くいます。でも、ぼくは風邪もあまりひかない、つい自分を過信してしまうような、年の割には健康な部類で、日頃から好きなだけ飲んで食べて、「ぼくの辞書には節制という文字はない」という日常でした。
とはいえ、健康を気にしていないというわけでもなく、年に1度の人間ドックも欠かさず行い、3年前までは特に引っかかることもなかったんです。ところが、一昨年(2015年)の秋、突如として肝臓のがんマークが跳ね上がり、かかりつけの医者に「大病院で検査をしてもらったほうがいい」と言われました。検査の結果、「肝細胞がん」だと告げられました。
そう言われて「ガーン」としない人はいないと思いますが、主治医はごく普通に病名を告げるんです。ぼくの知識では、がんだったらまず家族に知らせる。そして家族が本人をおもんぱかって隠すか告知するか決める……というシナリオがあったので、「どうやらそういう時代ではなくなったらしい」と思ったことを覚えています。
肝臓の左上部に影があり、それががん細胞の疑いがあること。それを手術で切り取ること。手術したら転移している可能性もあるが、その場合、転移の範囲が広いと手術は諦めて抗がん剤や放射線の治療を考えること。そんな説明を受けました。主治医は温厚にして磊落な人で、冗談を織り交ぜつつ話をしてくれるので、気分的には助かりました。