漫画家・東海林さだお氏 肝細胞がんと闘い辿り着いた境地
「手術は成功!」と主治医に言われ、麻酔がまだ効いているせいか痛みもなく、腹部右側の全長40センチほどのL字形の患部を「なんでこんなところにこんなにも大きな傷ができたんだろう」と思いつつ、目を閉じました。
肝臓のおよそ10分の1、159・9グラム。これはレバ刺し1人前程度に相当すると思いますが、それを切除したのみで転移はなし、胆のうも切らずに済みました。術後、痛みはそれほどでもなかったのですが、苦しかったのが呼吸です。エベレストに登ったことはありませんが、登ったらきっとこんな感じ? と思えるほど肺機能が低下して、1週間くらいは苦しかったですね。
あと、病院内を歩いていたから脚力に問題はなかったものの、驚いたのは手の指の力の低下です。いつもなら普通に開けられるペットボトルのフタが開けられず驚きました。そして、孫の手の重要性に気づきました。なぜだかかゆい手の届かない場所が、孫の手によってスッキリする喜びは、入院患者なら誰でも知っている。病院の売店には、孫の手を置くべきです。
■この年になってやっと「節制」を覚えた