記憶や運動能力も良くなる? コーヒーの効果とメカニズム
アデノシンとは遺伝子の本体となるDNA(デオキシリボ核酸)や遺伝情報の伝達やタンパク質の合成などに関わるRNAの材料であり、生命のエネルギー通貨と呼ばれるATP(アデノシン三リン酸)を構成する物質。細胞外にもわずかながら存在し、抑制性神経伝達物質として働く。
細胞の表面にあるARに結合することで神経活動は安定化する。逆に結合が遮断されると神経細胞は興奮する。そのため、わずかな量であっても体に変化を与えることができるという。
例えば、仕事や運動で脳が疲労するとエネルギー(ATP)代謝の残りカスとしてアデノシンが産出される。それが大脳基底核にあるARと結合すると、興奮や覚醒、快楽や不安などの情動が抑えられて眠気を催す。
「一方、カフェインの分子構造はこのアデノシンと似ているため、ARに結合することでアデノシンの作用を遮断する。間接的に興奮性神経伝達物質のグルタミン酸やドーパミンなどを放出させて、大脳基底核から線条体や大脳皮質に投射する神経回路を興奮させるのです」
■神経を抑制する物質を抑制する