心蘇生後の脳機能障害が軽くなる「水素ガス吸入療法」

公開日: 更新日:

 当時、佐野准教授が行っていたのは、心筋梗塞に対する水素ガス吸入の有効性の研究。動物実験で効果を確認した上で、救急外来患者の臨床研究(20例)でも水素ガスを吸入した方が治療後の心臓のポンプ機能が改善することを証明した。

「しかし、心筋梗塞はカテーテル治療など治療法が確立されています。それで他に有効な疾患はないかと、着目したのが心停止後に蘇生した患者さんへの応用です。心停止すると心拍が再開しても8割が亡くなり、助かっても脳に後遺症が残ることが多いからです」

■大がかりな装置は不要

 従来、蘇生後の脳へのダメージを減らすために、体温を強制的に低下させる「体温管理療法」が行われている。

 しかし、体温を早く冷やすために高度で大がかりな装置が必要になるので、高度救命救急のような施設でないと実施が難しい。

 それが水素ガスの吸入が有効となれば、大きな病院でなくても簡便に実施できる画期的な治療法となる。

 そこで佐野准教授らのグループは、心停止をさせたラットであらためて実験。水素ガス吸入療法に体温管理療法と同程度の脳機能の改善効果があることを実証。この基礎研究から同大では、人に対しても救急医療の現場で5人の心肺停止患者に水素ガス吸入療法を行い、退院4人、死亡1人の研究結果を得ている。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  3. 3

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  4. 4

    最後はホテル勤務…事故死の奥大介さん“辛酸”舐めた引退後

  5. 5

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    名古屋主婦殺人事件「最大のナゾ」 26年間に5000人も聴取…なぜ愛知県警は容疑者の女を疑わなかったのか

  3. 8

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 9

    高市内閣支持率8割に立憲民主党は打つ手なし…いま解散されたら木っ端みじん

  5. 10

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘