「2週間の命」と告げることで安らかな死を迎えられるのか
Aさん(68歳・男性)は膵臓がんで抗がん剤治療が効かなくなり、B病院からCホスピスに転院。その3日後、ホスピスの主治医である若い女医さんが、奥さまにこんな話をしたそうです。
「Aさんはまだまだ生きられるつもりのようですが、命はあと2週間と予想されます。ご家族の了解が得られれば、そのことをAさんに告げたいと思いますが、いかがでしょうか? 多くの方は、最初は大変混乱されますが、だんだんそれを受け入れて次第に穏やかになり、最期は安らかになられます。ご家族もこの状態を受け入れていかなければなりません」
その時、奥さまは「本人には、そのことだけはどうしても言ってほしくない」と主治医に頼みました。しかし、その夜から奥さまは悩んだといいます。
ホスピスの主治医は「最期は安らかになる」と言っている。もし、自分が反対したために夫の最期が安らかになれなかったらどうしよう……。
それでも、いまのAさんの様子を見ると「どうしても本人には伝えてほしくない」と思いました。奥さまは思い悩み、Aさんには内緒で私の外来に相談に来られたのです。