がん細胞が免疫監視システムからの攻撃を逃れる4つの手段
では、研究でどんなことがわかっているのか?
例えば、T細胞はアミノ酸が少ない環境が苦手。そのため、がん細胞は免疫抑制性サイトカインとしてアミノ酸のひとつであるアルギニンやトリプトファンの分解酵素を豊富に分泌して、T細胞の活動を抑えるという戦略があるという。
また、免疫抑制機能を持つ細胞には制御性T細胞やMDSCがあって、それぞれ集まりやすいがん種があることがわかっている。前者はすい臓がん、肺がんが多く、後者は大腸がん、肝臓がん、乳がん、胃がんに多いといわれている。
免疫チェックポイントは、T細胞表面に表れる「鍵分子」と、がん細胞側の「鍵穴分子」が結合することで免疫の攻撃にブレーキがかかる仕組みだが、鍵穴分子はどんな環境でもT細胞の活動を抑えているわけではない。がん種や患者によって出現する鍵穴分子の数が違っていて、T細胞が攻撃するときに出すサイトカインのひとつ、インターフェロンγががん細胞の近くにあると、多くの鍵穴分子が出現することがわかっている。
高齢になると例えば胸腺が衰えて、がん細胞を殺すT細胞の機能が衰える。そのためがん細胞が増えるのは仕方がないことだ。しかし、がん免疫監視機構さえしっかりしていれば、がんとの共生は夢ではないかもしれない。