がん細胞が免疫監視システムからの攻撃を逃れる4つの手段
がん細胞が免疫監視機構から逃れるための主な手段として4つが明らかになっている。①自己と非自己を区別する基本的な標識であるMHC(ヒト白血球抗原=HLA)と、がん細胞の目印となるがん抗原の産生を低下・消失させること。免疫細胞の攻撃目標を失わせるためだ②がん細胞が分泌する免疫抑制性サイトカインで免疫を直接的に抑制すること。血管新生を促すとともに樹状細胞の抗原提示機能を不全にするVEGFもそのひとつ③免疫抑制機能を持つ細胞をがん細胞の周囲に集めて微小がん環境をつくること④攻撃してくる免疫細胞を無力化するサインを送ること。ノーベル医学生理学賞で注目の免疫チェックポイントがそのひとつだ。
国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。
「がん治療が難しいのは、元は正常細胞だったがん細胞を免疫細胞が異物として認識・攻撃しなければならないこと、がん細胞はその攻撃から逃れるために、複雑で複数の機構が働いていることにあります。免疫はがん細胞を攻撃する仕組みでありながら、それから逃れるための知恵を与える役割を果たしている側面があることも厄介です。免疫を強化してがん細胞への攻撃力を強固にすればするほど、厄介ながん細胞が生まれてくるかもしれないのです。そう考えると、がんを治すには、まずはヒトが本来持っている免疫監視機構の『異物の認識』と『排除する能力』を取り戻すことが肝心です。ノーベル賞で注目されている免疫チェックポイントはそのひとつであり、がん細胞が仕掛けるこれら4つの仕組みを元通りにできれば、がんはより治る可能性が高まってくると思います」