腸内細菌ががんや難病を治す 新薬開発や便移植にも期待
「いくつかのがんの発症に特定の腸内細菌が大きく関係しているということは、腸内細菌のバランスを整えれば、がん予防につながる可能性があるということです。もっと研究が進めば、腸内細菌のバランスをしっかりコントロールできる効果的な薬剤が開発されるかもしれません。また、フソバクテリウム・ヌクレアタムは人間の口腔内にすむ常在菌なので、がん予防には口腔内のケアが当たり前という時代が来てもおかしくありません」
腸内細菌は指定難病の潰瘍性大腸炎とも関係が深い。潰瘍性大腸炎は免疫機能に異常を来し、無害なものまで攻撃して無用な炎症を起こさせる。大腸の粘膜がただれて下痢、血便、腹痛、発熱といった症状が表れ、長期にわたって良くなったり悪くなったりを繰り返す。
「患者さんの腸内を調べてみると、腸内細菌の種類が少なく、分布のパターンに乱れ(ディスバイオーシス)があることが分かっています。食事や衛生といった環境の要因と遺伝子の要因が重なり合って腸内細菌のバランスが崩れ、結果的に免疫系が暴走し、発症に関わっていると考えられているのです」
現時点では、まだ根治治療はなく、免疫機能を調節する投薬治療が一般的だ。