医療費の透明化が医療サービスの過剰利用につながる可能性
医療機関を受診して診察や検査を受けるとき、診察費や検査費などがあらかじめ分かっていたとしたら、医療サービスをどのように利用するでしょうか。
費用が高ければ、必要最低限の検査や診察で十分と思う方もいらっしゃるかもしれませんし、想定よりも費用が安い場合、念のためにたくさんの検査を受けたいと思う方もおられるでしょう。
日本は皆保険制度であり、一般的な診療において患者負担が高額になるケースはまれです。そのため、医療サービスにかかる費用の透明化が、社会全体の医療費にどのような影響を与えるのかについては不明でした。
そんな中、医療サービスの費用をあらかじめ患者に明示することにより、医療費がどのように変化するのかを検討した研究論文が、健康に関する社会科学研究の専門誌2019年8月号に掲載されました。
この研究では、2016年1月の第1週から3週にかけて日本の総合病院を受診した290人に対して、あらかじめ医療サービスの費用を明示して診療を行い、かかった医療費を2015年と2017年の同時期に受診した患者763人(費用の明示なし)と比較しています。なお、結果に影響を与えうる患者の年齢や性別、診断名、合併症の有無、自己負担割合などの因子で統計的に補正して解析しています。