認知症の高齢者は脳トレよりも楽しく生きることが最も大切
長年、老年精神医学の臨床現場で生きてきた立場から力説したいのは、認知症の高齢者にとって「機嫌よく、楽しく生きる」が最も大切だということ。ストレスを感じながら脳のエクササイズやトレーニングに励むのではなく、気分よくレクリエーションとして脳や体を動かすこと。それが認知症の進行を抑えるために有効なのだ。「今回は解答率が低かった」「今日は4000歩しか歩かなかった」などとノルマのストレスを感じてエクササイズに励むよりは、「今日の『世界!ニッポン行きたい人応援団』は面白かった」「公園のコスモスがきれいに咲いていた」など、脳を心地よくする機会を増やしたほうがいいのだ。
このコラムで以前も紹介した知人の母親について、新しいエピソードがある。
現在92歳で一人暮らし。介護ヘルパーの訪問はあるものの、認知症の症状はない。先日の日曜日、近所に住む知人が母親の家を訪れたところ、開口一番こう尋ねてきたそうだ。「ノックオンていうのは、どんな反則?」。若いころからスポーツ観戦が大好きだった彼女は、ワールドカップ日本開催を機に92歳にしてラグビーにハマってしまったのだ。