ブロッコリー成分がうつ病・自閉症・統合失調症を予防する
がん予防効果などでも注目されるブロッコリーやブロッコリースプラウトなどの成分「スルフォラファン」に、うつ病などを予防する効果があるのではないかと期待が高まっている。千葉大学社会精神保健教育研究センター副センター長の橋本謙二教授に話を聞いた。
スルフォラファンは強い抗酸化作用と抗炎症作用があり、ブロッコリーなどの中では前駆物質グルコラファニンとして存在。橋本教授はグルコラファニンを0・1%含むエサをネズミに21日間与え、最後の10日間、ネズミにストレス(1日10分間を10日間)を与えた。
「人間はうつ病になると興味の喪失や意欲の低下など『アンヘドニア』という症状を起こします。ネズミの場合は、ショ糖飲水試験という方法でアンヘドニアを調べられます。健康なネズミは甘いものが好きなので、甘いショ糖水を好むが、うつ様行動を示すネズミはあまり興味を示さず、飲む割合が低い。これが人間のアンヘドニアに相当するのです。研究の結果、グルコラファニンのエサを食べたネズミは、ストレスを与えてもショ糖を飲む率が下がらなかった。つまり、うつ様行動を示さなかったのです」(橋本教授=以下同)
一方、通常のエサのネズミはストレス後、うつ様行動を示し、ショ糖を飲む率が下がった。
橋本教授は脳の変化も調べた。同じくグルコラファニンを0・1%含んだエサを21日間与え、その後、脳の炎症を引き起こし、うつ様行動を引き起こす物質LPS(リポポリサッカライド)を含む生理食塩水を与えた。そして、脳を摘出して、うつ病に関連する脳の前頭前野を調べた。
もし、うつ様行動を起こしていたら、前頭前野の「樹状突起スパイン」の密度が低下する。しかし、グルコラファニンのエサを食べたネズミは低下していなかった。通常のエサのネズミは樹状突起スパイン密度が低下し、うつ様行動を示した。
橋本教授は、自閉症、統合失調症、パーキンソン病などについても研究を行った。
「近年、自閉症、統合失調症、パーキンソン病などは遺伝的な要因だけでなく、環境要因が関係しているのではないかと考えられています。お母さんの体内に胎児としている時に、お母さんが何らかのストレスから炎症を起こし、それに胎児が母体の中で曝露され、自閉症や統合失調症などの発達障害の発症につながることが多くの疫学研究から分かっているのです」