本物の香りと辛味で塩分を補い食欲を増進

公開日: 更新日:

酵素反応による辛味に抗がん、抗菌作用

 香辛料と人間の食文化には長い歴史がある。料理にちょっとしたスパイスを利かせることは、味を引き立てるアクセントになり、食欲を高進させる材料でもある。また、肉や魚の臭みを消す働きもある。香辛料は種類によって、その化学構造も違えば、作用機構も異なる。

 今回のからしは、いわゆる和からし。アブラナ科の植物であるカラシナ(もしくはその近縁種)の種子をすりつぶした黄色い粉末。実はわさびもアブラナ科の植物なので、からしとわさびは親戚。どちらもイソチオシアネートという揮発性の物質が辛味の正体である(差はその他の香気成分による)。

 アブラナ科の植物の芽の部分を食べると清涼感があるのは、みなこの成分のせい。植物がこんな成分を保有しているのは、むやみに虫などに食べられてしまわないよう防御(忌避物質)するため、と考えられる。植物はこの辛味成分の原料を油の形で貯蔵していて、それ自体は辛くない。植物が傷つくと酵素反応によって油から辛味成分が切り離される。揮発するので空中に広がり、敵を撃退する。なので人間がからしを利用するときも粉をよく練って酵素反応を起こさないと辛くならない。からしの辛味が鼻にツンと抜けるのは揮発性のため。あまりに辛いときは鼻をつまんで空気が口から鼻に抜けるのを防いだほうがいい。イソチオシアネートは、抗がん作用、抗菌作用、動脈硬化予防作用などが動物実験で示されているので、健康増進食材ともいえる。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渋野日向子の今季米ツアー獲得賞金「約6933万円」の衝撃…23試合でトップ10入りたった1回

  2. 2

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  3. 3

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です

  4. 4

    陰謀論もここまで? 美智子上皇后様をめぐりXで怪しい主張相次ぐ

  5. 5

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  1. 6

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  2. 7

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  3. 8

    Snow Manの強みは抜群のスタイルと、それでも“高みを目指す”チャレンジ精神

  4. 9

    小室眞子さん最新写真に「オーラがない」と驚き広がる…「皇族に見えない」と指摘するファンの残念

  5. 10

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か