“声の衛生教育”を2カ月 6割以上の人の声帯ポリープ消えた
「乾燥やほこりに注意する」「無理な発声の禁止」「大声を出さない」「声が出にくい時は出さない」「風邪の時は無理をしない」などと患者に“教育”を行うのは手間がかかるからだ。言語聴覚士が不足しているという問題点もある。最初から声の衛生教育を行わず、手術を勧める医師も少なくない。
角田医師が、手術前の声の衛生教育が重要だと考えるのは、次の理由からだ。まず、全身麻酔をかける手術は患者の体に負担をかけること。次に、手術が医療費の負担増になること。さらに、声帯ポリープは原因を解決しなければ、手術で取ってもまたできること。声の衛生教育は、つまりは、声帯ポリープができにくい声の出し方を指導するものなので、再発防止にもなる。
「私たち国立病院機構の全国11病院からなる感覚器研究グループは、声の衛生教育の効果を客観的に示すために、世界初のランダム化比較試験を行いました。その結果は、2018年発行の医学誌『Laryngoscope』に掲載されました」
角田医師らは、声帯ポリープと声帯結節(声帯にできるコブ)の患者200人を2つのグループに分けた。具体的には、①医師、言語聴覚士、患者によるチーム医療で啓発DVDなどを用いて声の衛生教育を行う②声の衛生教育について書いたパンフレットを渡し、注意喚起するのみ――という2つのグループだ。