「髪の毛が抜けてしまうのは嫌!」叫んでみても気持ちは…
きっと、そうなのだ。そうなのだろう。でも我が家では、死んだら灰にして、お墓の中の骨壺に入れる。ご先祖さまもずっとお墓の骨壺の中にいる。骨壺は益子焼だ。昔、祖父の友人がこしらえた壺だ。土に返るのではない。だから、我が家の灰は植物や動物になる自然の循環にはなかなか入らない……。エジプトのピラミッドだってずっとミイラのままだ。でも、人間の起源は500万年前か……。
Mさんは、なんだかつまらないことを考えているなと思いながら、周りに誰もいないのを確認してから、大きな声で叫びました。
「リンパを取ってしまったから、もうがんがないと思ったのに、先生はきっと見えないがんが残っているから、抗がん剤治療をすると言うのです。ご先祖さま! 私、抗がん剤治療は受けます。でも、嫌なんです! 髪の毛が抜けてしまうのは嫌です!」
叫んでみれば、少しは気持ちがすっきりするかと思ったのですが、ちっとも変わりません。
先ほどの雲は、ライオンの形から、ご先祖さまかお釈迦さまが横になっている姿のように、形が変わって見えてきました。