「噛む力」は心臓にかかる負担の大きさに関係している
交感神経が優位な状態ではアドレナリンが分泌されて心拍数増加や血管収縮による血圧上昇が起こり、心臓の負担が増えて動脈硬化が促進されてしまいます。
一方、副交感神経が優位になると、心拍数が抑えられ、血管が拡張して血圧も低下し、心臓の負担は少なくなります。日頃からしっかり噛むことができる人は、副交感神経が優位になる状態が多くなり、心臓や血管へのダメージを減らせると考えられるのです。
■食事内容の変化も影響か
また、われわれが噛む動作をするときは、咀嚼筋だけでなく、舌、口蓋、喉、咽頭などさまざまな筋肉が動きます。噛むことでそうした筋肉が緩むと副交感神経の働きが高まり、心拍数を上げたり血圧を上昇させるストレスホルモンの過剰な分泌が抑制されることもわかっています。一定の間隔で噛むリズムが、副交感神経を優位にするという意見もあります。
さらに、副交感神経とは関係なく、噛む力が弱くなると食べ物をうまく噛み砕けなくなるため、野菜や肉、魚介類といった硬いものを避け、糖質が多く含まれた軟らかいものを選んで食べるようになる。そうした食生活の変化が動脈硬化を促進して、心臓疾患の発症リスクが高まるという見方もあります。