高齢者や終末期患者の抗がん剤の飲み方を考える 在宅医療の名医が解説
実際、抗がん剤をやめることで食欲が回復して体力がつき、寿命を延ばしたがん患者を山中院長は数多く見てきたという。とはいえ、抗がん剤や難病の薬のおかげで命を永らえていると考える患者にとって、それを中断することは命を失うことと等しい。そのタイミングはどう計ればいいのか?
「食事の量が減って大幅な体重減を経験したとき、吐き気や下痢の継続などが続くときが中断のタイミングです。薬は確かに患部にはよく効きます。がんを小さくしたり、間質性肺炎を改善させたりします。ただし、患部以外への悪影響も強い。特に消化器への影響が強く出て、人が生きていくための最低限の体の機能すら保てない状態に陥ってしまうこともあるのです」
注意したいのは病院の医師が必ずしもその「薬をやめるべきタイミング」を正確に見極められるわけではないことだ。医師は患者の痛みや苦しさ、日々の生活での不自由さをすべて理解できないからだ。
「多くの患者を抱える医師は、体重減少や食事量、全身状態を十分確認せずに、腫瘍の大きさの変化や血液データだけを見て薬を安易に継続してしまうこともまれではありません。だからこそ、患者さんが薬の副作用から身を守るためには、薬による体の変化を自分でしっかりと確認し、その状態を素直に主治医に伝えることが大切なのです」