なりたくない病気1位「認知症」の実像 在宅看取り年間200人の名医が語る
認知症は最もなりたくない病気だという。2021年に太陽生命が実施した「最もなりたくない病気は何か」というアンケートでも、2位の「がん」(28%)を引き離し、ぶっちぎりのトップ(42%)だった。しかも、この結果は20~70代のどの世代においても順位は変わっていない。日本人の死因1位のがんよりもなりたくない病気、認知症の実際を、年間200人超の看取りを行う「しろひげ在宅診療所」(東京都江戸川区)の山中光茂院長に聞いた。
病院に行けない人への診察を行う在宅診療の現場では、患者のほとんどが高齢者で、初診の段階ですでに「認知症」という診断名がつけられている人が少なくない。ただ、生活と密着した在宅診察をしている立場から見ると、「最もなりたくない病気」とのイメージとは大きくかけ離れている実態もあるという。
「認知症を怖がるのは、『徘徊』『おかしな言動』『自分らしくいられなくなる』『家族や周りの人たちに迷惑をかける』などのイメージがあるからです。そうした事例があることは否定しませんし、認知症で苦しむ本人や家族の現実があることは間違いありません。ただ、認知症になり、その症状が進行したから必ずしも不幸になるというものではありません。その時々に応じた適切な医療的な対応、介護環境の整備など、現実的に対処することで解決する事例がほとんどと言えますし、認知症と幸せに共存している方が多いとすら言えます」