アルツハイマー病の新薬は認知機能低下を7カ月半遅らせる
先週21日、アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」の承認が、厚生労働省の専門部会で了承されました。厚労相が正式承認すれば、アルツハイマー病の原因物質を脳から取り除く初めての薬となります。
アルツハイマー病が初めて報告されたのは1906年。ドイツの医師、アロイス・アルツハイマー博士が、記憶障害があり、51歳で亡くなった女性の脳を解剖して調べたところ、脳の萎縮とともに脳の神経細胞の外にシミのようなものがあることを発見。「老人斑(現在はアミロイド斑とも呼びます)」と名づけました。
その後、大きな進歩があったのは1980年代、この老人斑の主成分がアミロイドβタンパクであるという発見でした。さらに1990年代には、アルツハイマー病発症が多い家系の遺伝子を調べたところ、APP(アミロイド前駆体タンパク質)を作る遺伝子の変異があり、それがあるとアミロイドβが固まりやすくなることがわかったのです。そして、英国のジョン・ハーディー教授は、アミロイドβがアルツハイマー病を引き起こす原因に関係しているという仮説を発表しました。
そして、最大の発見であり、治療にも大きく貢献した研究は、1999年、米国のデール・シェンク博士によるものでした。アミロイドβが原因なら、脳からアミロイドβを取り除けばいいのではないか--。彼が発表した動物実験の内容は、世界の脳科学者に衝撃を与えました。コロナやインフルエンザのワクチン接種と同様に、ワクチン接種でアミロイドβに対する抗体が体内で産生。それによってアミロイドβを取り除けることを証明したのです。