閉塞性肥大型心筋症の新薬は従来治療の問題をまとめて解決する可能性がある
ほかにも、副作用として意欲を喪失してやる気がなくなったり、男性機能障害が起こるケースもあります。投薬治療では、そうした副作用を受け入れながら続けなければならないのです。
肥大して厚くなった中隔の心筋を切り取る外科手術「中隔心筋切除術」は、切りすぎると中隔に穴を開けてしまって心室中隔欠損を招いたり、切除の場所を見誤ると房室ブロックを起こすリスクがあるので、外科医には経験が求められます。心臓を止めて人工心肺装置を使うので、患者さんの体への負担も大きくなります。そうしたことから、どの医療機関でも実施できる方法ではないといえます。
カテーテルを使う「経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)」は低侵襲な治療法ですが、治療後に深刻な合併症を起こすリスクがあります。PTSMAは肥大した心室中隔に酸素と栄養を送っている血管に無水エタノールを注入して標的とする心筋を焼灼し壊死させて、意図的に心筋梗塞をつくる治療法です。そのため、治療した箇所が後々になって致死的な不整脈などの原因になる可能性もあるのです。また、心臓の状態や構造といった患者さんそれぞれの状況によって、望める治療効果が変わってくるという課題もあります。