心筋梗塞の発症後に「痛み」があると死亡リスク増…海外調査を考える
また、日本に比べて米国は肥満やメタボリックシンドロームの人が非常に多く、調査の舞台となったスウェーデンも近年は肥満人口の増大が深刻な社会問題になっています。
海外の研究では、メタボの人が心臓のカテーテル治療を受けた場合、6割近くの人が再治療になるというデータが報告されています。このように本来なら再治療が必要な患者さんたちの多くが“野放し”になっているわけですから、1年後の調査で痛みがあると回答する可能性は高いといえますし、いわゆる「心事故」と呼ばれる心臓死のリスクがアップしているとも推測できます。
「心筋梗塞発症後に痛みがあると長期予後が悪い」という結果に対する理由はほかにも考えられます。近年のカテーテル治療では、血管内に留置する金属製のステントに薬剤を塗った薬剤溶出性ステントが使われています。このタイプのステントに対してアレルギーのような反応が生じ、治療前とは違う痛みを治療後に訴える患者さんが増えているのです。
さらに、薬の使い方が原因になっている可能性もあります。欧米では心筋梗塞の治療後、動脈硬化を抑制するためにLDLコレステロールを低下させるスタチンという薬を大量に使うケースが多く見られます。スタチンには筋肉痛や筋肉のこわばりといった副作用があって、痛みを訴える人も少なからずいるのです。そうした人は痛みをコントロールするために服薬を中止したり、減薬して対処しがちです。すると、結果的に動脈硬化の抑制効果も望めなくなり、予後の悪化につながります。