著者のコラム一覧
堀田秀吾明治大学教授、言語学者

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

「負」の感情が湧いたときには同じ行動をとるようにする

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「怒り」というのは、日常で私たちの判断を誤らせる原因にもなりますし、あらゆるトラブルのもとにもなります。ときには、怒りを原動力やモチベーションに変えることもできますが、どちらにしても上手に付き合わなければいけません。

 実際に、さまざまな研究で、怒りやイライラは行動に出す(怒声やモノに当たるなど)と、八つ当たりしてしまったり、よりネガティブな感情を引き起こす結果が明らかになっているほど。そのため、アンガーマネジメントのような対処法が求められるわけです。

 よく言われる「心の中で数字を数える」──。実はこれもきちんと科学的根拠があり、ノースウエスタン大学のフィンケルラが怒りを抑えるのに効果があったとして発表しています。

 私たちは、怒りを覚えるような出来事があると、脳内で神経伝達物質であるアドレナリンやノルアドレナリンが分泌されます。顔が赤くなったり、血圧が高くなったり、心臓の鼓動が速くなったりするのは、これらの神経伝達物質によるものです。

 一方で、脳はこうした怒りの感情を制御する機能も備えています。それが前頭葉です。前頭葉は、理性をつかさどる脳ともいえ、感情の爆発を冷静な思考で抑えてくれる役割があります。お酒を飲みすぎると、前頭葉が働きづらくなるため、ハメを外す人が出てきてしまいます。

 前頭葉は、すぐには働いてはくれません。感情が湧いてから、大体4~6秒かかることがわかっています。逆にいえば、最初の4~6秒をやり過ごせれば、感情に流されずに、いったん冷静になりやすくなるともいえます。その際、やみくもに数字を数えるのではなく、数字を意識するように。前頭葉を働かせるために、数字をカウントするわけですから、そこに意識を働かせることが大切です。

 怒りだけではなく、恐怖や妬みといったネガティブな感情が湧き上がったときも、同様の効果が期待できますから、気持ちがず~んと重くなったときは、その気分に流されるのではなく、まずは息をふ~っと吐いてゆっくり数えてください。

 欧米の小学校教育などでは感情的になった生徒に対して、「深呼吸をして」と先生が3回深呼吸させるという注意の方法があります。これも呼吸に意識を向けさせて、時間の経過を待つ目的があると考えられます。つまり、落ち着きたいときは必ずしも数字をカウントする必要はなく、いかにして前頭葉が働くまでの数秒間を冷静かつ意識を集中させられるか。

 その上で、負の感情が湧いたときは、あらかじめいつも同じ行動をとることをオススメします。「オペラント条件付け」と呼ばれるもので、同じ条件で同じ行動を繰り返すことで、脳はパターン化される性質を持ちます。

「感情が乱れたときに10数える=冷静になれる」ことを繰り返すと、スムーズに脳がそう意識しやすくなるのです。アスリートが競技のときに行うルーティンのようなものですから、負の感情を抱いたときは、決まった対処法をとるようにしてください。

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