著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

過去とはまったく逆の使われ方をしている治療薬がある

公開日: 更新日:

 ところが、β1遮断薬を使うと、心不全患者の予後が逆に良くなることがわかりました。心臓は無理をさせると疲弊してしまうため、適度に休ませてあげることで逆に機能が改善するのです。こちらは現在では心不全患者によく用いられるようになりました。

 もちろん、以前から変わらず心不全患者に使われているクスリもあります。それは利尿薬です。利尿薬を使って体内の水分を外に出すことができれば、血圧が下がって心臓の負担を軽くすることができます。そこで現在はβ1遮断薬+利尿薬という処方もよくされています。また、新しいクスリも出てきています。

 いずれにしても、以前は心不全の治療薬とされていたカテコールアミンが現在ではほぼ使われておらず、以前は心不全に使ってはいけないとされていたβ1遮断薬が現在では治療薬として頻繁に使われるようになったのです。ちょっと極端ですが、「昔のクスリが今は毒になり、昔の毒が今はクスリになった」というとイメージしやすいですね。まさに、時間とともに治療方法がまったく逆になったということです。


 無理が利かない臓器は他にもあり、それが膵臓です。糖尿病でインスリンの分泌が悪くなっている患者に、強制的にインスリンを出させるクスリを用いると、膵臓の細胞が疲弊してしまいます。そのため、あえてインスリンの注射を導入することで、膵臓を休ませて機能を回復するやり方もあります。

「昔の敵は今日の友」──。こういったことがクスリの世界でもあるということはじつに興味深いと思いませんか?

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  2. 2

    フジテレビ「第三者委員会報告」に中居正広氏は戦々恐々か…相手女性との“同意の有無”は?

  3. 3

    大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

  4. 4

    兵庫県・斎藤元彦知事を追い詰めるTBS「報道特集」本気ジャーナリズムの真骨頂

  5. 5

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  1. 6

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  2. 7

    冬ドラマを彩った女優たち…広瀬すず「別格の美しさ」、吉岡里帆「ほほ笑みの女優」、小芝風花「ジャポニズム女優」

  3. 8

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  4. 9

    やなせたかし氏が「アンパンマン」で残した“遺産400億円”の行方

  5. 10

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」