長寿研究のいまを知る(4)老化抑制に強く影響する「サーチュイン遺伝子」と「エピジェネティック」
サーチュイン遺伝子は別名「長寿遺伝子」と呼ばれ、老化や寿命の制御に重要な役割を果たしているとされる。サーチュイン遺伝子は、現在、哺乳類ではSIRT1からSIRT7までの7種類が発見されており、それぞれの遺伝子から作り出される特定タンパク質(サーチュイン酵素)の発現量を増やすことで老化を制御している。
「7種類のうち最も重要な働きをしているのがSIRT1で、血糖値を下げるインスリンの分泌を促したり、糖や脂肪の代謝をアップし、神経細胞を守って記憶や行動を制御するなど、老化や寿命に大きな関係があることがわかっています。SIRT3は細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアにおいて、エネルギー=ATPの合成を促します。SIRT6はDNA(デオキシリボ核酸)の2本の鎖の修復に関係します」
■遺伝子スイッチの仕組み
そもそも遺伝子のスイッチのオン、オフはどのようにして起きるのか? それを理解するために、ざっと細胞と染色体などの基礎について知っておきたい。
「人間は約250種類、約60兆個(約37兆個など諸説ある)の細胞でできています。そのなかに核があり、染色体が入っています。これを拡大するとヒストンと呼ばれるタンパク質にDNAが巻き付いていることがわかります。DNAの一部に、生物の特徴を決めたり、細胞の活動を支えるために必要な約10万種類のタンパク質を合成するための設計図である遺伝子が刻まれています。染色体はDNAを2回巻き付けたら、残りのDNAを別のヒストンに2回巻き付け……といった構造になっていて、DNAがからまって切れたりするのを防いでいるのです」