長寿研究のいまを知る(4)老化抑制に強く影響する「サーチュイン遺伝子」と「エピジェネティック」
今以上の長寿を実現するには、テロメアへのアプローチ以外に、どのような方法がありえるのか? ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師は大きく2つある、という。
「ひとつはダメになった臓器を全部、もしくは一部交換する方法です。例えば、亡くなった方などの腎臓や心臓の移植だったり、歯のインプラント、人工関節、眼内レンズといった人工臓器だったり、ウシの心膜やブタの大動脈弁で作った生体弁を壊れた心臓弁と交換することなどはすでに行われています。今後は、医学の進歩によって新たな技術が生まれ、より広範囲に行われる可能性があります」
2022年1月に米国で遺伝子操作によってつくられたブタの心臓を人間へ移植する手術が世界で初めて行われた。これなどその典型だろう。
もうひとつは、全身の細胞に働きかけて、老化を可能な限り均等に遅らせる方法だ。
「テロメアの短縮を防いだり、伸ばしたりするアプローチもそのひとつですが、いまは長寿に関係する特定の遺伝子のスイッチをオンにすることで長寿を目指すという研究が盛んに行われています。そのターゲットのひとつとして世界の研究者が注目するのが『サーチュイン遺伝子』です」