(6)五輪標語を変えたIOCバッハ会長はますます難しい舵取りを迫られる
提案者はIOCバッハ会長である。創始者の言葉を変えるのだから、よほどの覚悟があったはずだ。昨年3月のリモート総会で会長に再選された直後の演説でモットーの刷新を提案し、「より速く、より高く、より強く」に「共に」という言葉を付け加えようと強く訴えた。コロナ禍の厳しい状況の中で東京五輪に向けて努力している選手たちに「皆で一緒に」と励ますメッセージを込める意図であった。コロナ禍での五輪は開催されたが、戦争という新たな障害がやってきた。
■「世界」と「平和の祭典」を危機にさらす国々がある現実
ロシアのウクライナへの軍事侵攻にIOCは勧告を出し、競技会を管轄する各国際競技連盟などに対し、主催大会にロシアとベラルーシからの選手、関係者を参加させないように求めた。しかし、選手が属する国の政府がどんな決定をしようが、その決定に関与していない選手を裁くことは、政治、宗教、人種などあらゆる差別を超えてスポーツをする権利を主張するオリンピズムと矛盾しないか?
私はIOCにそのことをただした。「国連決議されたオリンピック休戦をロシアが破ったことに立場を示す必要があった」との答えが来た。